Vaundyとシティポップの関係を紐解く

「シティポップ」ってどこから聞けばよかったら分からなかったり、昔のサウンドを聞くのって少し抵抗があったりしますよね。
実は、"Vaundy"シティポップから着想を得て、楽曲を作っているアーティストの1人です。Vaundyを聞けば、シティポップを楽しめるようになるかもしれません。この記事ではVaundyの雑誌インタビュー記事をもとに、Vaundyのシティポップ楽曲と、影響を受けている楽曲を紹介します。

 

今回紹介する楽曲はこちらになります。

 

 

それでは、1つずつ見ていきましょう。

 

恋風邪にのせて Vaundy

最初に紹介するのは、こちらの楽曲。都会のビル群の中をドライブしているかのような、疾走感あるメロディ。ノリがいい感じがしながらも、哀愁に浸れるようなサウンド・歌詞も特徴です。 私がこの曲を初めて聞いた時は、夜に友達と車を走らせている時でした。イントロを聞いた瞬間に「昔っぽい曲だね」と話していたのがすごく印象に残っています。まさしく私のシティポップの原体験ですね。
個人的には、成田凌さんと蒔田彩珠さん演じるMVも是非チェックしてほしいです。かなりインパクトのあるMVなので。

youtu.be


恋風邪にのせて』に合わせて聴いてほしいのが、小田和正の『ラブ・ストーリーは突然に』ですね。

恋風邪にのせて』と似たような疾走感と切なさが入り混じったメロディ。サビで流れるキラキラの効果音のようなパーカッションの雰囲気も似ていますね。Vaundyは、Apple musicで配信されている「Tokyo Highway radio」のEP.49でゲスト出演した際や雑誌等でも小田和正さんの影響について語っています。『恋風邪にのせて』も影響を受けている可能性は大いにありそうですね。

そんなシティポップ感満載の『恋風邪にのせて』ですが、MUSICA(ムジカ)2024年1月号の巻頭インタビューにて、きっちり裏付けがされています。

で、"惑う糸"、"おもかげ"と"恋風邪〜"の共通点としては、みんなちょっとシティポップで繋がっているんですよね。(中略)ちょうどそうなった時期に、これは日本でも絶対来るぞと思ったから当てるつもりで、"恋風邪〜"をちょっとシティポップ仕様につくったんですよね。

引用 : MUSICA 2024年1月号 (株式会社FACT:令和6年1月15日)

なるほど、どおりで昔っぽさを感じるわけですね。このインタビューでも触れられている『おもかげ』と『惑う糸』に関しても順番に触れていきましょう。

おもかげ(produced by Vaundy) milet, Aimer & 幾田りら

この曲は割と現代のサウンドに寄っている感じがしますね。milet、Aimer、幾田りらの声が現代感を強めている感じがします。正直この楽曲がシティポップで繋がっているのは意外でした。ノリのいいビートとイントロから曲を通して流れる渋いベースが特徴です。
実はこの『おもかげ』に関しても興味深いことを語っています。

厳密に言うと、"おもかげ"と"惑う糸"は同じ世界線で作ったんですよ。それはなぜかと言うと、コラボ相手とか歌う人を別にすれば同じメロディでも違うことが起きるんじゃないかと思って、実験したんです。だからあの2曲は<僕らは/こうして>っていうところが同じなんですよね。(中略)シティポップって基本的にキラキラがメインじゃないですか。そのいなたさみたいなものをつけ加えていくのに"おもかげ"のキラキラが必要だった。

引用 : MUSICA 2024年1月号 (株式会社FACT:令和6年1月15日)

『おもかげ』と『惑う糸』にそんな関係性があったとは... 『おもかげ』は、いわばキラキラのシティポップソングというわけですね。にしても提供楽曲で実験するとは恐ろしい発想ですね(笑) というわけで『惑う糸』も聞いていきましょう。

惑う糸 菅田将暉(Vaundy楽曲提供)

日本テレビ系『news zero』のテーマソングとなっているこの曲。イントロのギターからシティポップ感満載です。たしかに『おもかげ』のサビ部分と聴き比べてみるとメロディが完全に一致しています。Vaundyは以下のように語っています。

で、実は"ルビーの指環"(寺尾聰の大ヒットAORソング)を意識して作ったダークなシティポップというイメージが"惑う糸"だったんですよ。

引用 : MUSICA 2024年1月号 (株式会社FACT:令和6年1月15日)

なんとシティポップの代表の中の代表の『ルビーの指環』からインスピレーションを受けてるんですね... 「ルビーの指環?なにそれ?」ってなる人は是非チェックしてください。聴いたら多分、これか!ってなると思うので。

実際に聴き比べてみると、たしかにサビのコーラスの部分なんか、もろ寺尾聰だなってなります(笑)。

それを経て、あのダークなシティ感とキラキラのシティ感をギュッとやって"恋風邪〜"とか"瞳惚れ"とか"まぶた"とか、そういう曲たちができ始めた。これもまた、全部繋がってます。

引用 : MUSICA 2024年1月号 (株式会社FACT:令和6年1月15日)

なるほど、『おもかげ』と『惑う糸』は、先ほど取り上げた『恋風邪にのせて』のルーツ的存在になるわけですね。このあたりを踏まえた上で聴き比べてみると、また違った発見がありそうですね。

瞳惚れ Vaundy

ギターやサビの部分が山下達郎サウンドを彷彿とさせます。イントロから踊り出したくなるようなビート、リズムの良さですね。僕は聞いた瞬間に「山下達郎だ!」ってなりました(笑)。「SPARKLE」なんか個人的には似ていると思います。現在山下達郎さんの楽曲はサブスクで一部しか配信されておりませんが、YouTubeではサブスクにない有名曲のMVが一部配信されているので、是非チェックしてみてください。


イントロのギターの雰囲気とか似てると思いませんか!この楽曲では、80年代の曲調と令和の音質の中間を録ることにこだわったそうです。

確かに曲調に関しては80年代を意識してるんですけど、音的には80年代のままじゃダメだと思って。グルーヴ感をもうちょっと洗練させたいって言う意識と、音質的なものを令和に置き換えていかなきゃならないと言う意識があって。その整合性を取るのが意外と難しかったですね。

引用:MUSICA 2024年1月号 (株式会社FACT:令和6年1月15日)

確かにAメロのドラムなんかは低音がすごく良くて、現代のイヤホンで聞くスタイルに完全にハマってる曲ですね。

トドメの一撃(feat. Cory Wong)

Vaundyがシティポップの集大成だと語るこの曲。"トドメの一撃"はアメリカのファンクギタリストのコリー・ウォンとのコラボ曲です。ファンクギタリストとのコラボ曲ということで、かなりギターにこだわっています。実際ギターはシティポップにかなり近いものになっています。こちらも山下達郎の楽曲と聴き比べてみると、近いものを感じられますね。

そうなんですよ。あれが本来のギターなんですよ。♪ジャーン!♪とか♪ジャカジャーン!♪じゃないんですよ。
しかもそのプレイはもともと日本にもあったんですよ。さっきのクラシックポップスの話になりますけど、Charさんや山下達郎さんや小田和正さんとか。

引用:Talking Rock! 2023年12月号増刊(株式会社トーキングロック 2023年11月9日)

ここで取り上げられているCharの楽曲も是非チェックしてほしいです。Vaundyがこだわっているギターの音がより分かると思いますよ。

また、インタビューでも取り上げられていた『まぶた』も是非チェックしてほしいですね。ギターの雰囲気がシティポップらしいです。この曲からもVaundyのギター・カッティングへのこだわりが感じられますね。

今回は、Vaundyのシティポップ楽曲について振り返ってみました。今回を機に、是非80年代のシティポップをディグってみてはいかがでしょうか。